学生時代、唯一好きだった授業が西洋美術史だった。
そして、もの静かでどこか聖職者のような佇まいの教授が、
「これだけは読むように」と目頭を熱くして学生たちに語ってくれた本が、
須賀敦子「コルシア書店の仲間たち」であった。
以来20年。
須賀さんの文章を何度も読み返し、
この凄さって何だろう?
とずっと考えているのだけれど、
分からず。
最近手にした文藝別冊
「須賀敦子ふたたび」のなかにあった一文。
「それは本というより、底なしの哀しみ、行方知れずの孤独。
須賀敦子の宙づりの荒野へとさらっていく」(姜信子)
写真は「夏はぜ」の実。